アイドルマスターは隆盛を極めている。
確かに数字を見ればその通りかもしれない。ソーシャルアプリのユーザーは100万アカウントを超え、
シンデレラガールズのCDは3万枚前後、765プロアイドルのCDもかつての7000枚前後から
1万前後へと復調している。スレッド式掲示板にはアイドルマスターを題材にしたSSスレッドが立たない日は無い。
しかし、コミュニティの豊かさではどうであろうか。
非常に勝手な尺度を押し付けて恐縮であるが、コミュニティの豊かさと言うのは
「どれだけコミュニティに属している人間が、その来歴を問わずに話題を交わせるか」だと私は考えている。
この尺度を踏まえた上で、次のような例を挙げて行こう。
「星井美希は意識的に自分の美貌を利用する『女』を強く持つ少女である」
例えばアニメやアイドルマスター2から彼女に触れた人はそういった印象を持つであろう。
或いは動画投稿サイトで有名になったセクハラさんのコミュだけが印象に残っている人も
同じようなイメージを抱くかもしれない。
しかし初代アイドルマスターのゲームを遊んだ人間は全く逆のイメージを抱くであろう。
公務員の両親と姉に囲まれ、何不自由なく育った少女。
彼女は無垢であり、天然である。洗練されていないと言う点では孵ったばかりのひな鳥をイメージさせるかもしれない。
彼女の奔放さや、時に異性を誘惑するような仕草も計算づくのものではなく
怖いもの知らずで育ったが故のものであるというものだ。
「秋月律子はスパルタで厳しい女性で、データの鬼だ」
アニメやPS3版のエキストラを遊んだ人間の印象はそういったものであろう。
あるいは事務所の危機に際して自ら進んでアイドルの道を絶つ自己犠牲の女であると。
だが初代アイドルマスターでの彼女はこうだ。
自分の得意とするものは乗り気ではあるが、自分の不得意な分野に関してはずぼらで脇が甘い。
スパルタとは相いれないタイプの少女である。
また自分自身のプロポーションに関して数値化できるものであっても自信が無い、データの鬼と言うには
主観が多すぎる少女でもある。
さらに言えば自分の目標を大事にし、そのためには信頼する片腕である「プロデューサー」でさえ利用する、
と言ってのける少女である。
さすがに11人を列挙するのは読者も飽きるだろうからこの辺りで筆を置くが、
「アイドルマスター」と言う作品にどこから入ったかでキャラクターへの理解が全く変わってしまうという状況で
同一の話が出来るかと言えばはなはだ疑問である。
そこには「可愛い」と言った空疎な言葉が飛び交うコミュニケーションしか残っていないのではないかと、
想像力に乏しい私には思えてしまうのだ。
シンデレラガールズのアイドルたちはどちらかと言えば一点突破の個性を持った子たちで、
これからの中身を作っていくのはユーザーたちであろう。
他のデータベース消費型のコンテンツがそうであるように。
しかし、原作と言うキャラクターの肉付けが存在する765プロダクションのアイドルにおいては
そのキャラクター理解一つとっても共通の会話が取れないという状況では、果たしてその先に
豊かなファンコミュニティが出来るかと言えば、
明るい見通しが立たないのではないかと、私は不安になるのだ
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