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人生の落伍者が酒に塗れながらくだらない事を書き連ねます
(2017/12/15)
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(2011/10/14)
さぁ、久しぶりの挑戦となります1時間SS。
お題は「人恋しい」を使用しました。

……ずれてるよ!思いっきりずれてるよ!そんな作品でもよろしければ、
是非ともご笑覧あれ。


*  *  *

夜の765プロ事務所。アイドルや候補生たちは皆帰途についており、事務所の他のスタッフも既に終業の時間。
社長も引き払った現在の事務所には俺と小鳥さんしか居ないのだが。




~あなた恋いしや、この夜半に~


「あの、小鳥さん?」
「なんですか、プロデューサーさん」
「何をしているんです?」
今日一日の仕事を終え、次に入った担当アイドルの仕事に向けての準備をしている俺の背中に
べったりと小鳥さんが貼りついて来たのだ。
「何って、プロデューサーさんの体温を背中越しに感じているのですよ」
「俺が言いたいのは、なんで俺の仕事の邪魔をするような事を小鳥さんがするかって事ですよ」
「お邪魔でしたか?」
「えぇ、とっても」
小鳥さんの問いかけに、書類と向き合ったまま小鳥さんには一瞥もせず答える。
もちろん、小鳥さんの体重自体は大したことは無いのだが、背中越しに伝わってくる小鳥さんの体温とか、
あるいは柔らかいそのふくよかな胸の感触は、自分の思考を乱すには十分すぎるものだった。
努めて平静を装って、もう一言何か言ってやろうかと思ったところで
小鳥さんは俺の背中から体を離すと、まるでこの世の終わりの様な顔をしてよろよろとよろめくと、
そのまま俺の隣のデスクへと突っ伏したのだった。
「あぁ、プロデューサーさんが冷たい……」
「仕事中に邪魔されたのなら、邪険にも扱いますよ」
「今まではあんなにも愛し合った仲なのに」
「はいはい、そういう事にしておきます」
「ぶぅ、冷たいですよ。プロデューサーさん」
そう、俺の隣でむくれる小鳥さんに「子供っぽいですよ」なんて嫌味の一つでも言おうとしたのだけど。
そもそもこの人はこんな子供じみた絡み方をする人だったかな、なんて事を考えた。

事務所でアイドルたちや俺以外のスタッフと一緒にいる小鳥さんと言えば、こんな子供っぽい振る舞いをすることはまずない。
事務所のみんなを温かく迎え、プロダクションの事務としての仕事をてきぱきとこなす、良くできたスタッフを演じている。
――もっとも、時々とんでもないへまをしたり、思考の海に耽溺して彷徨っているなんて事もあるが、それはご愛嬌だ。
少なくとも先の様に子供っぽく絡んで来る、なんて事は俺と一緒の時でも滅多にしない事だ。

また彼女に何かあったのだろうな。その『何か』を詮索する代わりに、俺はまだ隣のデスクにふくれっ面を乗っけている小鳥さんの頭に手を伸ばすと、
その柔らかい、翠色のボブカットを優しく撫でた。
「まったく。今日の小鳥さんはなんか変ですよ」
小鳥さんの柔らかい髪の毛を撫でながら、俺は尋ねる。
嫌がる事もせずに小鳥さんは俺の手を受け入れると、小さく息を吐いた。
答えを聞き出すような事は、しない。
ただ彼女が自分から話しだせるように、静かにその髪の毛を梳き続けた。

「……夢を、見たんです」
暫く目を伏せて俺の手を受け入れていた小鳥さんが、ぽつりと、そう零した。
「夢?」
「えぇ。何もかも失くしちゃって、私はまた一人ぼっちになる、そんな夢」
彼女の髪を梳き続けながら、俺は少しだけ彼女の過去に思いを馳せた。
俺より年上なはずなのに、少女の様にあどけない表情をする小鳥さん。そんな彼女の顔に時折落ちる、とても冷ややかでさびしげな陰。
俺は彼女の過去に何があったかは、知らない。

ただ、彼女に寂しげな表情をさせるその過去がどれだけ冷え冷えとして辛いものであったかは、わずかに想像することができる。

俺は小鳥さんの頬に手を添えて、言う。
「小鳥さん一人を置いて居なくなったりしませんよ。社長や、他のスタッフに、アイドルたち。みんな小鳥さんを慕っているんですから」
小鳥さんは答えない。ただ、目を閉じたままで俺の手のなすがままになっている。
「よしんば他の皆が居なくなったって、俺が付いていますから。どこまでもご一緒しますよ」
歯が浮くような言葉。でも、偽りのない俺の本心だ。

と。

その言葉のあとで、目を閉じていた小鳥さんがやおら目を見開くと、頬に触れていた手をがっしりと掴んで、
がばりと、凄い勢いで跳ね起きたのだった。

「ふっふっふ、青いですわね、プロデューサー殿」
うちのアイドルの一人、秋月律子が担当プロデューサーを値踏みする時の様な口ぶりで小鳥さんはそう笑うと、
掴んだ俺の手を目の前でぷらぷらと泳がせた。
「すっかり騙されましたね、プロデューサーさん。私の『人恋しさに思わず恥ずかしいセリフが出ちゃう』と言う実験の被験者として、
立派な反応を返してくれましたね~」
「はぁ?ちょ、ちょっと」
これは他のプロデューサーやスタッフには教えられないわねーなんて呟きながらくねくねと身をよじらす小鳥さんを見て、
俺は小さくため息を吐いた。
「待ってください、さっきの発言は無しでっ」
「えー、それじゃあどうしようかなー」
そう言って逃げるそぶりをする小鳥さんを追いかける俺。

そんな風にじゃれ合いながらも、頭の片隅できっとこれは実験じゃなくて小鳥さんの本心を垣間見たものなんだろうと
俺は考えていた。

そしていつか、小鳥さんのどうしようもない寂しさの理由も、その時に抱える人恋しさも受け止められたらなんて
大それたことを考えていたのだった。


(了)

*  *  *

東方1時間SS……うぅ、頭が!?

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